いにしえの傍聴記録:首都圏連続不審死事件06 木嶋佳苗 詐欺未遂被害者Iさん尋問 | 高橋ユキの事件簿 #84
こんにちは〜。週末いかがお過ごしでしたか。コロナの感染者も増えてきて不安ですが、ニュースレターが自宅でのんびりする時間のおともになれば幸いです。
今日はいにしえの傍聴記録です。
2012年にさいたま地裁で傍聴した、木嶋佳苗の一審公判。同年刊行『木嶋佳苗 危険な愛の奥義』(徳間書店)ほかの執筆のためにまとめた公判データになります。
木嶋佳苗の家族の調書のところを書きますと前回告知していましたが、かなり短いので、別の機会にチラッと書かせていただきます。
いにしえの傍聴記録
2012年傍聴 さいたま地裁 首都圏連続不審死事件公判 06
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※無断転載防止の観点から一部情報を伏せたり割愛している箇所があります
過去の記事 順番に
【2012年1月16日 第4回公判pm 詐欺未遂被害者・Iさんの証人尋問】
被告人名:木嶋佳苗
罪名:詐欺、詐欺未遂、窃盗、殺人
交際していた男性を練炭自殺に見せかけて次々に殺害したという3件の殺人罪、婚活サイトで出会った男性から金銭をだまし取った、またはその未遂として6件の詐欺・詐欺未遂罪、詐欺被害者の男性の財布から5万円を抜き取ったという1件の窃盗罪で起訴されている。
被告人は全ての殺人について否認しており犯人ではないと主張していた。
この4回目の公判の午後、詐欺未遂の被害者Iさんが証人として出廷。被告人の騙しの手口、詐欺だと見破った経緯などが語られた。
【Iさん 証人尋問】
遮蔽措置がとられ、傍聴席からは外見が全く分からず。声が若くない。年齢がいっているような印象。
起訴状・詐欺未遂部分のふりかえり
被告人はマッチドットコムジャパンにおいて金銭強取を企て、平成21年7月、Iさんに対し、当時の被告人方のPCから、結婚の意志があるように装い、真剣に結婚を考えているのでお金を貸して欲しい、という内容のメールを神奈川県に住む被害者に閲覧させたが結婚の意志がないことを見破られ、詐欺を遂げなかった。(補足:この詐欺未遂は、3件の殺害のうち、寺田さん事件、安藤さん事件の直後、大出さん事件の直前のもの)
検察官から
「私の方から、婚活サイトから、何人かメールした中で、えーっと、えーっと、木嶋さんのアドレスっちゅーか、プロフィール、年齢が34歳と若くて、男性が70歳までだと。私は50代。それであの、サイトのウインクというボタンで、なんか、あのう、興味あるというような送信しました」(ウインクはマッチドットコムの機能。facebookの「挨拶」のようなもの?)
ーあなたは当時独身で相手を探していた。平成21年7月も?
「そうですね」
ーその後サイトを通じて、または個人メールで連絡を取り合うようになったんですね
「はい」
ー内容については?
「いやー、あのー、覚えてないです。一部復元できたと聞いています」
ー見れば思い出せますか?
「と思います」
(メール示される。モニターは切られたまま。被告人からのメッセージは『電撃的な結婚はあると思う。真剣に将来のパートナー探しています』など、いつもの内容。また、パートナーが他界して学費の支払いに窮しているという、お金無心のメールも送っている)
ーこのメールを見て?
「最初のメール、身の上話を伝えているので、真剣に考えているんだなあと。優しい人、ぜひ結婚したいなぁと感じました」
ー学費を負担してほしいともありますが。あなたは立て替えてあげようと思ったんですか?
「はい、通常約50〜60万くらいと思ってたんで、立て替えてもいいかなあと。もちろん結婚が前提です」
ー結婚のつもりがなければ、お金を出そうとは思いましたか?
「もちろん赤の他人なんで、出しません」
ー『学費』と言っていましたがそうでなかったら。『生活費』『クレジットカード支払い』だったら?
「もちろん思わないです。学費以外ということは、あのう、普通の生活であれば、収入の範囲内でやるのが当然……」
ー学費でなく、単身マンションや転居費用であったら?
「そもそもマンションのお金を出すっていうのはこれからもひとりで住むということ。始めからそれは嘘だと思うんで、出しません」
ー教育ローンについて。『1学期分を分納で申し込む』とメールにありましたが、これも嘘でした。これが嘘だと分かっていれば、お金をだそうと思いましたか?
「出しません」
ーなぜ?
「えーと、それは……ちょっと時間いただけますか……(少し沈黙があり)……私としては、真面目に介護の仕事をして、一生懸命、ローンを借りようと努力していた(と思っていた)。私も多少なりとも、借金して立て替えてもいいなと思ってました。そうでないと分かれば、嘘をつかれたことになるし、腹立たしい」
ー借金してでも、と言いますが、手持ちのお金はなかったんですか?
「ほとんどなかったです」
ー介護の仕事というのも事実ではなかった。もし嘘だと知っていたらお金を立て替えようと思いますか?
「いや、それはない。34歳にもなって、仕事もしないで、学費を払う努力もせず、私に金を出させる……それに対して怒りを感じました」
(いまはそういう気持ちだが、メールを見た当時は信じていた。だが立て替えるという返信はしていない)