いにしえの傍聴記録:さいたま地裁 首都圏連続不審死事件 検察側冒頭陳述 | 高橋ユキの事件簿 #71
こんにちは〜。
日曜日にだいたい、いにしえの記録をちびちびと出していければと思っています。ゴツいので、正月休みとかそういう、時間のある時にまとめ読みしていただくのがよいかなぁと思っています。
2012年にさいたま地裁で傍聴した、木嶋佳苗の一審公判。同年刊行『木嶋佳苗 危険な愛の奥義』(徳間書店)ほかの執筆のためにまとめた公判データになります。
本日配信分は初公判で検察・弁護側が行った事件全体の冒頭陳述です。
きょうの事件簿
毎日新聞2021年12月18日より。
「近所付き合い少なく素っ気ない」 大阪ビル放火 関与疑いの男性
金曜日の朝に大阪・北新地のビル4Fにあるメンタルクリニックで発生した放火事件。火を放った男の素性についての記事です。こういうテロにも近い犯行は、報道に接する方も落ち込みますよね。知り合いが被害に遭っていないか、とか、いきなり無関係の人を巻き込むなんて酷すぎる、とか、その場にいた方々はどんなに怖かっただろう、とか……。いろいろ考えます。いっぽうで、実名報道の在り方についても、最近のこうした事件では議論になりますね。曲解されたうえ変に焚き付けられて燃えそうなので、絶対にSNSには書きませんが、私も自分なりの考えはあります。いつかそういうことも、ニュースレターに書ければと思っています。
他媒体には、息子に対する殺人未遂罪で懲役刑の前科があることが報じられていました。
いにしえの傍聴記録
2012年傍聴 さいたま地裁 首都圏連続不審死事件公判 02
※無断転載は厳禁です 参考にされたい方は個別に連絡ください
※無断転載防止の観点から一部情報を伏せたり割愛している箇所があります
【2012年1月12日 初公判】
被告人名:木嶋佳苗
罪名:詐欺、詐欺未遂、窃盗、殺人
被告人の様子:青のカーディガン、ベージュのスカート(チノパンのような生地)。
交際していた男性を練炭自殺に見せかけて次々に殺害したという3件の殺人罪、婚活サイトで出会った男性から金銭をだまし取った、またはその未遂として6件の詐欺・詐欺未遂罪、詐欺被害者の男性の財布から5万円を抜き取ったという1件の窃盗罪で起訴されている。初公判は傍聴整理券交付締め切りが7時15分にも関わらず、49席の一般傍聴席を求め、663名の傍聴希望者が並んだ。
初公判では午前中に罪状認否と、全ての事件についての冒頭陳述が行われ、裁判所から争点が発表された。午後からは、大出さん事件の証拠調べとなる。今後、順に大出さん殺害事件、寺田さん殺害事件、安藤さん殺害事件の証拠調べが行われる。
【検察側 第一次冒頭陳述】
10件の起訴。殺人3件、詐欺、詐欺未遂6件、窃盗1件。
この裁判では1次冒頭陳述から3次まで3段階に分けて冒頭陳述をしていきます。まずこれを同時期の犯行にまとめ、埼玉、東京、千葉に分けます。そして(これから行われる)1次冒頭陳述では、3件に共通する時系列を説明し、その上で、それぞれの事件に共通するところを整理します。
2次冒頭陳述は、事件ごと。1つの事件にかかる日数は2週間。2週間ごとに3回行います。さらに2週間の間に約20名の証人を呼び証拠調べを行い、その仲でさらに3次冒頭陳述を行います。2週間のうち、8〜9回、20数回行う。順次冒頭陳述を行っていく予定です。
被告人は昭和49年、北海道生まれ。高校卒業後、上京しました。一貫して独身で、当時無職でした。
パトロンが亡くなり、生活に困窮しており、お金を得る目的で結婚サイトに登録しました。その男性から次々に多額の金をだまし取り、そして、関係を断ち切るため、自殺を装い3人を殺害した。これがこの裁判で審理の対象となっている、すべての公訴事実に共通することです。
時系列の表を示します(モニター全然見えない)。
平成21年9月の逮捕まで順に。右は関係のあった男性です。
SY
寺田隆夫
安藤健三
大出嘉之
平成15年頃、SYと交際を開始。逮捕当日まで続きます。被告人はこのとき吉川桜という偽名を用いています。平成15年、詐欺罪で懲役6月、執行猶予4年の判決を受けます。
平成15年にはパトロンの福山定男さん、70才でなくなるまで5年の間に7380万円もらっていました。福山さん死亡後、被告人は収入が途絶えて経済的に困窮します。
平成19年12月までに800錠もの睡眠薬を入手しました。
平成20年5月、生活に困窮した被告人は結婚サイトに登録し、平成20年6月、寺田さん、安藤さんと知り合います。
その年の6月〜7月には寺田さんから348万円入手し、安藤さんから80万円入手します。8月には、改めて結婚サイトに登録し、Mさん(42)、Kさん(47)と知り合います。
平成20年9月〜10月にはMさん、Kさんから149万円入手し、寺田さんからは150万円入手。
10月下旬には安藤さんと、10月28日のデートの際、安藤さんは原因不明の意識喪失に陥り、その間、被告人は絵画を無断で持ち出します。
11月、Mさんから、絵画に絡んでウソをつき、20万円入手します。寺田さんにも絵画を送付し、186万入手しています。
平成20年12月、Mさん、Kさんから合計159万円入手し、12月16日は安藤さんの自宅を訪問。カードを無断使用します。12月下旬、26日〜29日のことですが、26日は安藤さんとデートし、安藤さんはまたもや意識喪失に陥ります。被告人はその間、安藤さんのカードを無断使用します。
12月27日、Kさんとデートをし、Kさんは意識喪失に陥ります。29日、Mさんとラブホテルへ。このときMさんも意識喪失。
平成21年1月上旬、SYさんと1〜5日、裏磐梯へ旅行。帰宅直後に被告人は睡眠薬を入手します。1月中に練炭と練炭コンロを購入。寺田さんと結婚、同居を約束。1167万円をこの月で入手します。
1月10日、Kさんとホテルへ行き、Kさんは意識喪失。このとき被告人はKさんの財布から5万円を盗みます。Kさんは被告人に恐れをなして、以後、関係が断絶しました。
1月11日、寺田さんから婚約ブレスレットを購入してもらい、ブログに「愛の詰まった贈り物」という記事をアップ。そして1月30日、寺田さんの自宅で練炭を用いて殺害します。
SYさんには「パパに会ってる」とウソのメールをしています。
被告人は寺田さんが亡くなり、収入が途絶え、また生活が困窮していきます。