いにしえの傍聴記録:さいたま地裁 首都圏連続不審死事件03 弁護側冒頭陳述 | 高橋ユキの事件簿 #74

いにしえの傍聴記録(木嶋佳苗 さいたま地裁 03)
高橋ユキ 2021.12.26
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 こんにちは〜。きょうは、いにしえの傍聴記録だけ配信します。

 2012年にさいたま地裁で傍聴した、木嶋佳苗の一審公判。同年刊行『木嶋佳苗 危険な愛の奥義』(徳間書店)ほかの執筆のためにまとめた公判データになります。

 本日配信分は初公判の続き。弁護側が行った事件全体の冒頭陳述です。

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いにしえの傍聴記録

2012年傍聴 さいたま地裁 首都圏連続不審死事件公判 03

※無断転載は厳禁です 参考にされたい方は個別に連絡ください
※無断転載防止の観点から一部情報を伏せたり割愛している箇所があります

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【2012年1月12日 初公判

被告人名:木嶋佳苗

罪名:詐欺、詐欺未遂、窃盗、殺人

被告人の様子:青のカーディガン、ベージュのスカート(チノパンのような生地)。

 交際していた男性を練炭自殺に見せかけて次々に殺害したという3件の殺人罪、婚活サイトで出会った男性から金銭をだまし取った、またはその未遂として6件の詐欺・詐欺未遂罪、詐欺被害者の男性の財布から5万円を抜き取ったという1件の窃盗罪で起訴されている。初公判は傍聴整理券交付締め切りが7時15分にも関わらず、49席の一般傍聴席を求め、663名の傍聴希望者が並んだ。

 初公判では午前中に罪状認否と、全ての事件についての冒頭陳述が行われ、裁判所から争点が発表された。午後からは、大出さん事件の証拠調べとなる。今後、順に大出さん殺害事件、寺田さん殺害事件、安藤さん殺害事件の証拠調べが行われる。

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【弁護側 第一次冒頭陳述

(立ち上がり、裁判員のほうを向いて)

 弁護人はこの裁判で2つのことを明らかにします。ひとつは木嶋さんが本気で結婚を考えていた事。もうひとつは、木嶋さんは3人の男性を殺していない事です。

 まず、結婚相手を探し始めるまで。その後男性と交際した状況について。

 木嶋さんは昭和49年北海道生まれの37才です。妹が2人と弟が1人の4人きょうだいです。高校を卒業した木嶋さんは平成5年に上京。行政書士の父親の援助を受け、色々な仕事をします。ピアノを教えた事もあるし、シーズー犬のサークルを作り、子犬を紹介したり、繁殖の仲介をしていたこともあります。

 高校時代のボランティアの経験を活かし、資格の必要ない範囲で、介護の仕事をしていたこともあります。

 平成14年、27才から、千葉でリサイクル業者の福山さんのもとで働くようになります。福山さんの副業である株取引の手伝いや掃除、買い物、雑用等も行っていました。木嶋さんは福山さんに気に入られ、息子の嫁になって欲しいと言われるほか、給料だけでなく、生活費も出してくれるようになりました。この頃木嶋さんは円形脱毛症や顔面麻痺で通院していました。自由医療で高い費用を福山さんは出してくれていました。その後も支援は続き、木嶋さんは福山さんに甘えるうち、カードで値段を気にせず色々なものを買うようになり、エステやタクシーも……

 平成17年、30才の頃、病院から睡眠薬を処方してもらいます。この頃木嶋さんは不眠で良く眠れず、眠れないときに処方してもらって飲む生活をしていました。平成19年、当時70才の福山さんは体調を崩して亡くなってしまいます。木嶋さんは経済的に支援してくれる人を失いました。

 平成20年、当時33才。将来を考えて結婚相手を見つけようと、マッチドットコムに登録します。当時、木嶋さんはSYさんと交際していました。2人の間でその話が出た事はありますが、SYさんと2人で家庭を持つつもりはありませんでした。木嶋さんはSYさんに本名も教えておらず、「吉川桜」という、ネット上で使っていたペンネームを使っていました。

 33才の5月にマッチドットコムに登録した木嶋さんは名前や写真、プロフィールも載せて、有料会員となり、男性と連絡取り合える状態になりました。このとき実名で登録しています。

 平成20年、3人の男性と交際がスタートします。6月から交際が始まった寺田さん、美術館巡りという趣味が共通しており、50才を過ぎてましたが包容力があると感じていました。

 8月からはMさん、Kさんとも交際を始めます。Mさんは北海道出身。家族構成も似ていました。お金に堅実で倹約家であり、温厚で安心できる男性だと思っていました。

寺田さん事件

 木嶋さんは当時交際をする中で条件がありました。それは金銭的に自分の事を助けてくれる人であることです。木嶋さんは長い間、福山さんから助けてもらっていました。なので、男性が生活を助けてくれるのは当然だと思っていました。木嶋さんは以前の感覚が改められず、支払いに困っており、男性に助けを求めましたがカードの支払いに困っているとは言いづらく、大学院生だとウソをつきました。

 平成21年1月頃には寺田さんが最有力候補になっていました。木嶋さんが実は院生ではないのです、と言っても怒らずにたくさんの金銭も出してくれました。木嶋さんと寺田さんとの間で、結婚に向けた話が進みつつありました。

 しかし平成21年1月30日、寺田さんのマンションに行った際、別れ話になります。木嶋さんが、寺田さんの50を過ぎている年齢、セックスがうまくいかなかったことへの不満をぶつけたからです。その夜木嶋さんは寺田さん宅を立ち去りましたが、練炭コンロや練炭を持ち込んだり、火をつけたりはしていません。

 2月4日、警察からの電話で寺田さんが亡くなった事を知ります。事情を聞かれて交際していたことや30日に別れ話になった事を伝えました。

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