いにしえの傍聴記録:さいたま地裁 首都圏連続不審死事件04 大出さん事件 | 高橋ユキの事件簿 #77

いにしえの傍聴記録(木嶋佳苗 さいたま地裁 04)
高橋ユキ 2022.01.02
有料限定

 こんにちは〜。本年もどうぞよろしくお願いいたします。みなさまにとって、よい一年になりますように……!

 さて正月なのに恐縮です。いにしえの傍聴記録を通常通り配信させていただきます。

 2012年にさいたま地裁で傍聴した、木嶋佳苗の一審公判。同年刊行『木嶋佳苗 危険な愛の奥義』(徳間書店)ほかの執筆のためにまとめた公判データになります。

 本日配信分までは初公判。大出さん事件にかかる証人尋問などです。

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いにしえの傍聴記録

2012年傍聴 さいたま地裁 首都圏連続不審死事件公判 04

※無断転載は厳禁です 参考にされたい方は個別に連絡ください
※無断転載防止の観点から一部情報を伏せたり割愛している箇所があります

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【2012年1月12日 初公判

被告人名:木嶋佳苗

罪名:詐欺、詐欺未遂、窃盗、殺人

被告人の様子:青のカーディガン、ベージュのスカート(チノパンのような生地)。

 交際していた男性を練炭自殺に見せかけて次々に殺害したという3件の殺人罪、婚活サイトで出会った男性から金銭をだまし取った、またはその未遂として6件の詐欺・詐欺未遂罪、詐欺被害者の男性の財布から5万円を抜き取ったという1件の窃盗罪で起訴されている。初公判は傍聴整理券交付締め切りが7時15分にも関わらず、49席の一般傍聴席を求め、663名の傍聴希望者が並んだ。

 初公判では午前中に罪状認否と、全ての事件についての冒頭陳述が行われ、裁判所から争点が発表された。午後からは、大出さん事件の証拠調べとなる。今後、順に大出さん殺害事件、寺田さん殺害事件、安藤さん殺害事件の証拠調べが行われる。

***

 初公判のお昼休みを挟んで、午後がはじまる。被告人はフォーマルな装いに着替えてきた。紺色のジャケット、白いカットソー。下は同じ。傍聴席ざわつき、洋服のディテールを見ようと皆頭を動かしていた。のちに「お色直し」と大きく報じられることになる。

【大出さん事件 検察側冒頭陳述】

(これから2週間かけて大出さん事件を審理する旨告げた)

 事件は東京、千葉、埼玉の順番で発生しています。本来、埼玉事件は一番最後ですが、しかし、東京で当初自殺と判断され、千葉ではタバコの不始末と判断されました。けれども埼玉だけは当日に他殺と断定し、すぐさま被告人への捜査を開始しています。そこでまず、埼玉の事件を立証していきます(と、さいたま自慢)。

 警察がなぜ、他殺と断定して被告人の犯行だと分かったのかご覧頂きたい。

 現場の写真、練炭、練炭コンロ、警察官らの証言で立証します。現場は隣がアパートです。今はないが、ゴルフ用品店と街灯がありました。被告人は捜査時も今も、やってないと主張していますが、その弁解が成り立たない事も立証します。

 続いて被告人と大出さんの交際経過を立証します。

 7月13日、大出さんと交際を開始。

 7月18日、「大出さんと幸せになりたい」というメール。記録で立証。

 7月23日、肉体関係を持ちます。翌日24日、学費に充てると称し、470万円を入手。7月末〜8月初旬。結婚の約束。

 他の男性との関係。7月13日、Iさんに交際申し込み。その後SYさんと旅行(SYの証言、報告書で立証)。24日、学費と称し470万円を受け取っているが学費というのがウソだという事を立証します。

 被告人はその中で殺害を準備し、6月〜7月にかけ、すでに睡眠薬や練炭を入手しています。

 8月3日、あらたに睡眠薬入手。犯行2日前です。

 当時の被告人の経済状況。大出さんと知り合う前の6月〜7月、生活に困窮していた。大出さんは真っ当な仕事をしており、生活が順調だった事、経済的にも困窮していなかったこと(上司の証言より立証予定)。被告人が大出さんを妹らに紹介するとデートに誘ったが、ソレがウソだった事(妹たちの調書より立証予定)。

・殺害状況について。殺害の原因、死因(科捜研オオツカ、医師の証言より)。睡眠薬(同)。大出さん自身の睡眠薬入手歴がないこと。

・殺害後について。平成21年8月〜9月、他の男性に(KZ、SS、山田。3名のメールや証言より)交際を申し込んでいたこと。警察から連絡がなかったため、大出さんの自宅にウソのメモを残したことなど。

***

【大出さん事件 弁護側冒頭陳述】

 平成21年6月、この頃の木嶋さんは料理教室を開きたいと料理学校へ通っていました。同時に、夢を応援してくれる男性と結婚したいと思っていました。ふたたびマッチドットコムにプロフィールを載せます。ウソの内容はありませんでした。再び結婚相手を探します。SYさんとの交際はずるずる続いていましたが、SYさんとの結婚は考えてなかったのは述べた通りです。何人かの男性からメールが来ましたが、その中に大出さんもいました。

 7月13日、大出さんからメールが来ました。サラリーマンをしながらビルを経営している、積極的にアピールしてくる大出さんに関心をもち、返信しました。何度かメールでやり取りして、通っている料理教室の上のクラスへの進級の希望を述べます。大出さんは「学費の援助できるかもしれません」と返信してきて、頼りになる人だなと思いました。

 7月15日、大出さんと初めて会いました。夢を話すと「ウチのビルで教室を開いて学校に通えば良い」と言ってくれました。改めて頼りになる人だと思い、こうして結婚に向け交際がスタートします。

 7月23日、大出さんがマンションへ来ます。学費が高くて迷っている、と言うと、本当にいきたいなら出してあげる、と言ってくれて、やはり頼りになる人でした。その後、ホテルに誘われて一緒にホテルへ入ります。

 7月24日、神田駅構内で会い、借用書を作ります。実際に借りた訳ではないですが先に作って渡しておこうという事になっていました。このとき、学校帰りで疲れていた木嶋さんは家へ帰りたいというのが本音でした。そのため「学校に荷物をおいている。取りに帰らないと」と切り抜け帰宅します。「代官山に到着し、間に合った」とメールをしています。この日は借用書を作ってすぐにでも学費が借りれるという事になり感謝の気持ちを持った木嶋さんは「とても感謝しています」とメールしています。

 その頃、教室を開くための準備として、銀行からの借入金を精算したいと思っていました。そこで以前寺田さんにもらっていた金で精算しました。SYさんに札束の写真をメールしていますが、これも寺田さんから現金でもらったお金です。

 大出ビルはテナントが埋まっていた事が分かり、マンションを探す事になりましたが、7月31日に教室を開くためのマンションを借りられることが分かりました。料理教室を開ける話が進むことになり、嬉しくなると同時に大出さんとの生活を考えると不安になってきました。口では大出さんは応援してくれますが、実際料理に関心を示してくれない。ホテルでのセックスが上手くいかなかった。結婚を考え直そう、そう思い始めました。

 8月3日、結婚、学校の事をなしにしたいと伝えます。大出さんは「なんで?」と動揺していました。木嶋さんは電話を切ると、大出さんが落ち込んだら困るな〜とメールをします。

 8月5日、19時頃大出さんはレンタカーで木嶋さんのマンションへやってきました。「学費は借りない事にした」と電話で言っていたので、大出さんは借用書を持ってきてそれを破り捨てました。その頃木嶋さんは引っ越し準備中で荷造りをしていたのですが、その仲から練炭と練炭コンロを見つけ、ゆずってほしいと言ってきました。大出さんは自分でそれを運んでいます。食事の後は改めて「結婚を考え直したい」ことを伝えると「せめて最後にドライブに付き合って欲しい」と言われ、付き合う事にします。指示通りに運転し、車を停めたところが富士見市の月極駐車場でした。木嶋さんは大出さんから1万円を受け取り、その場を離れます。22時頃、タクシーを呼んでもらい、帰宅しました。持っていたのはバッグ1つです。

 8月21日、木嶋さんは大出さんの家を訪ねました。フランス菓子講座のときの写真を返してもらおうと思ったからです。しかし留守だったので置き手紙をして帰りました。この時点で木嶋さんは大出さんが亡くなった事を知りません。被告人質問で詳しく話します。

 埼玉事件で注目して欲しい事。まずは駐車場のことです。殺害場所にするにはあまりに不自然。近くにゴルフショップやアパートがある、月極駐車場でした。アパートのベランダが間近に見える場所です。実際、住民が8月5日の22時頃、レンタカーが停まっているのを目撃しています。駐車場の隣にアパートの駐輪場があり、街灯も2つありました。

 次に大出さんは自殺したと考えられる事です。動機は結婚話がダメになってしまったから。大出さんは41歳の独身で、30歳を過ぎて結婚サイトに登録しましたがなかなか交際に至らず、そんな中、木嶋さんと知り合い交際をすることになりました。結婚話は盛り上がり、母親にも嬉しそうにその事を話しています。「代官山の料理学校に行っていて、いろんなモンを作れるんだ。ボクはいきなり3人の兄になる。結婚指輪と婚約指輪、どっちがいいかな?」そんな中突然お別れを言われ、自殺したと考えられます。警察が行った現場捜査は8月6日の7時過ぎ。レンタカーを発見したことから捜査が始まりました。当直員の警察が捜索しましたがカギが見つからず、内部や周囲を探しました。しかし結局カギは見つからないと報告しています。現場捜索を指示した刑事課の警察官2名は現場を10時から捜索しています。範囲はこんな感じです(モニタに何か示すもよく見えず)。畑、アパート敷地内、駐車場前の道路……しかしカギやマッチ箱は見つかっていません。やはり、カギやマッチ箱は見つからなかったと報告しました。しかしオオハシ警部はその後捜索を指示せず、自分も現場に行っていません。捜索範囲以外にもいろいろマンションはあり、そこに捨てられた可能性は否定できません。

 睡眠薬入手の可能性。大出さんの遺体から睡眠薬の成分が検出されていますが、これは木嶋さんが飲ませたからではありません。大出さんが自分で飲んだんです。大出さんには手に入れる機会がありました。増毛手術の際、ハルシオンを処方してもらっているのです。自由診療を受ける事もあり、その際、処方された可能性もあります。木嶋さんのマンションリビングには薬箱があり、その中に睡眠薬がありましたが、7月23日、8月5日、2回、木嶋さんのマンションを訪れている大出さんが睡眠薬を手に入れている可能性も否定できません。また1年で、ハルシオンは3億錠、レンドルミンは4億7千錠出回っている。入手困難な薬ではありません。

 9月4日、木嶋さんのマンションから睡眠薬が押収されています。木嶋さんは不眠症に悩んでいる時期があって、診察を受けていました。すり鉢から睡眠薬成分が検出されています。なぜか?これは自分で使うためです。旅行先、外出したとき、他人に睡眠薬を飲んでいると知られたくない。そのためすりつぶし、市販のカプセルに入れて服用していたのです。

(14時〜14時15分 休廷)

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